2009年11月15日日曜日

designとは。

「デザイン思考の仕事術」

「SUBJECT TO CHANGE」

岸本和也担当分


 この2冊を最近読んだ上での、自分なりのデザイン論を改めて考えたいと思います。(「SUBJECT TO CHANGE」は金先生が以前紹介されていたので読んでみました。)


 自分の中での「design」の定義は “より多くの人の潜在的なニーズに訴えるもののつくり”とします。

 

 ひとつひとつ解説を加えます。


- “より多くの人"

 望むことなら全人類の問題を解決したいところですが、残念ながらそれは制限されています。(例えば先進国と途上国の暮らしの違いなど)ここでは(ターゲットの中で)より多くの人、ということを指します。

 年代や世代で明確にターゲッティングするのが従来のマーケティング手法だとすると、デザイン思考ではthoughtless actsや潜在的なニーズを中心にターゲッティングし、ターゲットを特定すると言えます。(つまりは人間の行動でセグメントを分ける)とはいえ、従来のマーケティングの様に顧客層ベースでのアプローチ法もあります。(IDEOのKeep the Changeなど)

 ここで活かされるのがフィールドワークなどを通じた観察→理解のプロセスだと考えます。定量性より定性性を重視します。ある程度定量的にモデル作りが行われるペルソナも、結果的にそのペルソナならいかに行動するかという定性的な面を重視すると言えるでしょう。

 


- “潜在的なニーズ”

 例えば、ユーザーがプロダクトを手に取った際、あるいはサービスを利用する際の「しっくりくる」「わかってる」という感じはユーザーの潜在的なニーズを満たしていると言えます。

 このニーズを満たすにはthoughtless actsの理解、または、焦点のブレが無い(言い換えるならば、シンプルで機能を一言で説明できる)ことが必要だと考えています。

 iPod以前にたくさんのmp3再生機器は存在しました。初代iPodも発売当初それほど高機能ではありませんでした。しかし、結果としてみれば、iPodの一人勝ちです。これは「いつでもどこでも好きな音楽を」というブレないコンセプトに基づいて、ソフトウェアによる管理や楽曲購入、プレイリストの作成などの機能を適切に盛り込んだ結果と言えます。

 

- もののつくり(ML上の議論の繰り返しになります)

 物理的にしろ、非物質的にしろ、半強制的に従わせるものです。(クリエイティブ・コモンズで知られるサイバー法の専門家、ローレンス・レッシグの4つの区分のうちの「アーキテクチャ」と同義です・不明な方はググっていただけると色々出てくると思います)

 「半強制的」と上述しましたが、否定的な文脈ではなく、肯定的にこの強制力を用いれればと考えています。例えば、ユニバーサルデザインは子供や年配の方、障害者の方も問題なく使えるように設計されています。また、IDEOの「Keep the Change」もアーキテクチャ(プログラム)によって自動的に端数が貯金されますが、基本的にはユーザーに不快感を与えない、それどころか「便利だ」と思わせるものです。

 この何気ない「便利だ」という気持ちはデザインされたものが潜在的なニーズを満たすが故にユーザーが持つものではないでしょうか。



また、実際にプロダクトやサービスが完成した後、一人でも多くの人の潜在的なニーズを満たすために改良を加えていく。そのためにプロトタイピングを行うと考えます。これはそもそも定性的な面を重視していたデザインの部分に定量的な面からの検証を行うことだと捉えています。定量的検証を行うためにプロトタイピングは何度でも行われるべきで、検証後すぐに改善をするというアジャイルなアプローチが必要とされます。


現在、おそらくアイデアの発散-収束で考えると収束の部分が一番方法論で行き詰まっているように感じます。これは“潜在的なニーズ”の所で述べたブレないコンセプトが早い段階で落とし込めていないためではないでしょうか。ブレないコンセプトを定め、吟味し、プロダクト・サービスの核にした後はひたすらアジャイルにKJ法、プロトタイピング、テスト、改善を繰り返すべきなのではないでしょうか。

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