2009年11月15日日曜日

デザイン思考の仕事術/棚橋弘季

小林です。
以下、この本を読んでの全体的な感想、および気づきを個別のセンテンスを参照しながら述べます。

全体を通しての感想:

  デザイン思考を現状のビジネスの現場にいかす際に(とくに企画立案やプロジェクトをマネージをする立場の人に向けて)役立つように書かれている本。
  それぞれのパートにおけるデザイン思考的アプローチのしかたをさまざまな言い換えによって表現しつつ、なぜそのようなアプローチをとるべきかの理由付けも丁寧に解説してくれるため、デザイン思考の入門書としては分かりやすいものになっている。
  ただ、さまざまな言い換えや捉え方を提示してくれるため、どれも理解しようとするとデザイン思考の概念自体の面白さに引っ張られて、かえって複雑に解釈してしまう危険性もあるのでその部分については注意が必要。
  また、デザイン思考を一般論的に語りつつも、ところどころ著者自身が確立している方法論(KJ法やペルソナ法)のみを基にして論を展開しているように見えてしまう部分もある。そのあたりはなぜこのようなアプローチをとるのかという理由について詳しく見ていけばいいと思う。

ピックアップセンテンス

  • 「わかっていること」の外に出る
何度もいいますが「わかる」ことが重要ではありません。むしろ、わかっていることの外に出ないといけない。固定概念の外に出るのです。フレームにあてはめ るというのは自分の内に留まることです。当たり前のことを当たり前だと思ってわかったような気になるのでは現場で観察する意味がありません。
p.77 デザイン思考の「情報収集術」:情報と情報化
  デザインとは、ニュートンが木から落ちるリンゴを見て万有引力の存在を発見したように、観察した対象の背後に潜む見えない関係性の糸を発見し、それを改善する行為。そのようなabduction的推論過程を経ることで新たな価値を創造することが可能になる。
  それゆえデザインプロセス初期の「OBSERVATION / LISTEN」のフェーズが最も重要になってくる。現場へ足を積極的に運び、五感を使って観察する。そこでは、無理に何かをわかろうとするのではなく、好奇心にまかせて、「よくわからないけどたぶん関係ありそう」というようなレベルの気づきまで含めて収集する。

  • すべてを統合する視点をみつける 
単に情報を分類し、グループ分けするのではなく、異なる情報間に関係性を発見することで、個別の情報からは見えてこなかった発想が生まれてくるところにKJ法の良さはあります。複雑系の科学でいわれる創発現象のひとつである相転移と同じようなことを、情報の群れを対象にした推論の過程で起こすのです。
p.70 デザイン思考の「情報収集術」:情報の圧縮化から発想が生まれる

  デザインのプロセスは、発見の連続である。集めた観察データも、単に整理分類して資料とするのではなく、発想するための材料として使う。視覚化し、並べ換えてそれぞれの関係性を俯瞰することで、妥協点の探り合いにならず、統合的な視点が手に入る。
  デザインとは、人間、モノ、ビジネス、技術、文化など領域横断的な広い視野でものごとを見つめ、その関係性を再構築する作業。デザインプロセスのところどころでこのような全体俯瞰作業を行うことが有効にはたらく。

  •  計画的に失敗する
計画の段階からさまざまなプロトタイプを使って最適解を見つける過程を組み込んでおくのです。結果的に失敗するのではなく、計画的に失敗してエラーがなぜどういう場合に起こるかを見つけていくのです。
p.191 デザイン思考の「問題解決法」:トライアンドエラーを計画的に

  デザインとは、経験をつくる活動。人の心がどう感じるかというのは非常に不明確で議論していてもラチがあかないから、さっさとカタチにして経験のプロトタイプをつくりだしてしまうのが一番。経験のデザインは、失敗を繰り返しそれを少しずつ改善していくことでしか最適解には到達できない。考えてからカタチにするのではなく、考えるためにカタチにする、という発想の転換が必要。失敗を恐れずに積極的にカタチにしていけるようなグループ環境のマネジメントをしていくことが求められる。

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